まず備えるべきこと(4つのR)― トラウマインフォームドアプローチ入門4−3

トラウマインフォームドなサービスがまず備えるべき4つのうち、前回(4)はRealize(理解する)を、前回(4-2)はRecognize(気づく)Resist re-traumatization(再外傷化に抵抗する)を紹介しました。

今回はRespond(応答する)です。トラウマインフォームドであるために、組織としてどう応答するのか、すなわち、どのように組織を作るか、組織を改革するかということです。

ガイダンス(PDF)に挙げられている項目を紹介します。

  1. すべてのスタッフをトレーニングするための予算をつける
  2. ミッションステートメントに「トラウマからの回復を促進する」となどと明記する
  3. 利用者を経営に参加させることで当事者の視点を組み込む
  4. スタッフの二次外傷に対処するためにメンターを置く
  5. 物理的・心理的に安全な環境を作る
  6. 信頼と公平性と透明性の保証された職場環境を作る

重要なことはトラウマインフォームドなサービスを提供する組織は自身がトラウマインフォームドでなければならない、ということです。組織運営のあり方から変えなければなりません(2,3,6)。このことはトラウマインフォームドアプローチまたはトラウマインフォームドケア(TIC)を謳う組織の試金石、リトマス試験紙でしょう。

個人的に重要だと思うのは、3、利用者を顧問や経営会議のメンバーとして迎えることです。サービス提供者・支援者と当事者・サービス利用者に生じる力(power)関係を是正するためには不可欠でしょう。

ただし、形だけにならないよう警戒が必要です。ユーザー代表が経営会議に出席していても、決めるのはもっぱらカリスマ経営者や声の大きいメンバーだったり、本当の決定は別の非公式な場で行われていたり…そうなると当事者を利用・搾取することになってしまいます。また他の経営メンバーに伍して発言できる当事者が現状では得難いという問題もあります。

もっとも、まずは迎えることが先決なのかもしれません。当事者も組織もそこから成長して行けばよい訳です。

クリニックちえのわはミッションの1つとしてトラウマインフォームドアプローチ(TIA)を掲げて、TIAの実装を目指しています。

スタートを切ったばかりで、スタッフのトレーニングもこれからです。利用者の参加についてはクリニックの重点項目と考えていますが、誰をどういう形で、という具体案までは落とし込めていません。

私たちは焦らずあきらめず着実に進んで行きたいと思いますし、そのプロセスは逐一報告して行くつもりです。

次回からはTIAが守るべき基本原理をガイダンスに沿って見て行きます。

基本原理とは

  1. 安全、信頼と透明性
  2. ピアサポート
  3. 協働と相互性
  4. エンパワメント、主張、選択
  5. 文化、歴史、ジェンダーの問題

の6つです。

とても重要な内容を含んでいるので、丁寧に紹介して行きたいと思います。