今回はちえのわの診察室をご案内します。
その前に…
昨日アップした記事(安全(第1の基本原理)―トラウマインフォームドアプローチ入門 5)について補足します。
サービス利用者(患者)の安全は心身両面にわたるものです。
からだでなくこころの安全とは、脅かされず安心感が持てることと言い換えてよいと思います。
身体拘束はこの意味でも患者さん本人にとって安全とは言えないと思います。自分から身体をベッドに固定しているのではなく、他人に縛られているのですから。
この話から連想したのは診察室のことでした。そこで、この機会にクリニックちえのわの診察室をご紹介することにしました。
診察室のトレンド?
従来、診察室では医師は机の前に、患者とは90度の角度で座るのがスタンダードでした。
しかし最近の心療内科・精神科では必ずしもそうではないようです。
クリニックの内装工事で、業者さんが用意した図面で診察室はこんな風に描かれていました。
「えっ?」
強い違和感を持ったので尋ねると、ここ1,2年その業者さんが関わった新設のメンタルクリニックではすべて、高さのある机を挟んで医師と患者が相対する、という配置だったそうです。驚きました。診察室ではなくて取調室みたい、と思いました。
何故この配置なのでしょう。考えられるのは医師の安全、安心感のためでしょう。仮に患者さんが暴力的になった場合、この配置が安全対策になっているかという疑問もありますが、それより患者さんの側から見るとどうでしょう。
患者さんは、高い机で守られているように感じるでしょうか?むしろこの物理的バリアは医師患者関係が作られることを妨げるのではないでしょうか。その一方で、医師と正対していることで圧迫感をおぼえないでしょうか。
(このレイアウトが本当にトレンドなのかどうか、調べてみたいものです)
クリニックちえのわの診察室
ちえのわの診察室はこんな風になっています。
特徴は
- 医師と患者は同じ型の椅子にすわる
- 電子カルテのパソコンは小さなテーブルに置く
- 椅子もテーブルも移動できる
です。
医師と患者の間に物理的バリアを置かない一方、互いに位置・距離・角度を調整できる、というのがポイントです(注)。
目を見て話をしているときもあれば、2人で電子カルテの画面を見ながら話しているときもあります。認知行動療法の場合など、1枚のシートを見ながら共同作業をしていることもありますが、これは正対していては不可能です。
レイアウトで気になることもあります。
入口はから見て患者さんが奥の方に来ています。これは構造上やむを得なかったのですが、通常と逆です。奥に招かれるのがよい、と言っていただいたこともありますが、果たしてどうでしょう。窮屈な気分になる人もおられるのではないでしょうか。そもそも診察室が狭い、という問題もあります。
このレイアウトがベストという訳ではないでしょう。トラウマインフォームドアプローチの視点からはどうなのか、さらに検討して行きます。そして、患者さんの意見を聞きながら改善して行きたいと思います。
椅子が動くのが不都合な場合もあります。たとえばEMDRを行うときです。そのときは、別の椅子に変えることにしています。