前回はパニック障害に使う薬についてお話しました。今回はパニック障害の心理療法をご紹介します。
クリニックちえのわの治療のメインは、パニック障害の場合も心理療法です。
さて、パニック障害の本体は不安です。治療の目的は不安を下げることに尽きます。
そのためにまず行うことは、心理教育とリラクゼーションです。
心理教育 ー パニック障害について知る
まず必要なのはパニック発作とパニック障害について知ることです。
主にメンタルヘルスの領域で使われる「心理教育(psychoeducation)」という言葉があります。問題とその対処法について学ぶことを助けエンパワーする、という意味です。パニック障害でも心理教育は必要不可欠です。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがあります。枯れ尾花とは枯れたすすきのことです。幽霊は正体が分からないから怖いのですが、それがすすきだと分かれば怖くありません。
同じように、パニック発作とパニック障害について知ることで不安を和らげることができるのです。パニック発作とは?で説明したように
急に息苦しさや動悸に襲われ、「死ぬんじゃないか」など強い不安を伴うが、心臓発作や窒息とは違い、命に関わらない「良性」の発作である
ということをまず知ることです。知ることで、「最悪の事態を考えてしまう」という破局的思考(パニック発作のしくみ)に陥ることなく、不安に対処できるようになります。
リラクゼーション ー 呼吸再調整法・漸進的筋弛緩法
呼吸再調整法と漸進的筋弛緩法を練習して身につけます。これは身体からアプローチして不安を下げる方法です。それぞれについてはすでにに説明しました。リンク先をご参照下さい。
まず練習として1日2〜3回行います。そのうちの1回は寝る前がお勧めです。リラックスできて寝付きがよくなる、という一石二鳥が期待できます。
練習で身について来ると、呼吸が浅く早くなったときや身体のどこかが緊張していることに気づくことができるようになります。気づいてもそれでさらに不安になるのではなく、呼吸再調整法や漸進的筋弛緩法でリセットすることができます。これでパニック発作に発展することが防げます。
特に何もなくても、あえて自分の呼吸や筋緊張に注意を向けてみるのもよいと思います。もし不安緊張が高まっていることに気づいたら、それに対応することでリラックスした状態を保つことができます。
クリニックちえのわでは、パニック障害の治療として、心理教育とリラクゼーションは必ず行っています。
繰り返すパニック発作と発作への不安、という問題はこのような心理療法のみで(薬を使うことなく)解決することが多いです。
しかし、パニック発作のために電車に乗れない、などの広場恐怖を伴う場合はもう一工夫必要です。次回はそれについてお話しします。