ちえのわ中間報告2― トラウマインフォームドアプローチ

昨年9月にスタートしたクリニックちえのわ、中間報告の第2回です。

トラウマインフォームドアプローチ()はクリニックちえのわの最重要ミッションです。

メンタルヘルスの問題の多くにトラウマ体験が関わっていること、にも関わらず従来のトラウマ理解に基づかない(non-trauma-informed)診療ではかえってトラウマを負うことがある(二次被害、再外傷化)こと、それゆえトラウマ理解に基づくアプローチが必要なこと…

これらについてはトラウマインフォームドアプローチ入門で述べてきました。

約半数にトラウマ体験の影響

では実際にクリニックちえのわを訪れた方はどうだったのでしょう。前回と同じく今年初めの1ヶ月間で一度でも受診した方について調べました。

 

 

その結果が左図です。

 

 

 

 

約半数がトラウマの影響を明らかに受けており、20%つまり5人の1人に子ども時代の有害な体験(Adverse Childhood Experiences=ACE)がありましたACEには性虐待などが、思春期以降のトラウマにはDVや職場のパワハラなどが含まれています。そして残り半数の「不明」の中にもご本人が明かしていない(あるいは気づいていない)トラウマの関与は否定できません。

国内の比較できるデータは乏しいのですが、クリニックちえのわと他の医療機関に大きな違いはないと思います。違いがあるとすれば、トラウマが認知されているか、その重要性が理解されているか、配慮されているか、などでしょう。すなわち、トラウマインフォームドか否か、です。

 

注:トラウマインフォームドアプローチ(TIA)トラウマに特化した治療(trauma-specific therapy)の違い

「トラウマ治療をしたい」というご相談を受けることがあります。ご相談いただくことはありがたいのですが、私たちはトラウマ体験のある方のすべてにトラウマに特化した治療が必要とは考えていません

特にACEのような深く広い影響を及ぼしているトラウマ体験のある方の場合、いきなりトラウマに特化した治療、たとえばEMDRを行うということはしません。これはEMDR治療者にとっては常識に属します。トラウマ記憶にアクセスすることはどこかで必要になるかもしれません。しかしそれを安全に行うためには十分な準備が必要です。特に生活困窮しているような場合は生活の安定が最優先であり、治療はその先にあります(「その後」を支える)。

一方でTIAはすべての方に最初の段階から必要です。 そうでなければ二次被害や再外傷化が起きてしまいます。

一般の方の誤解は止むを得ないとはいえ、精神医療関係者でもTIAとトラウマに特化した治療を混同している方がまだまだ多いように思います。精神医療全体がトラウマインフォームドになるには長い時間が必要なようです。