パニック発作とは? ー パニック障害 1

パニック発作やパニック障害(最近はパニック症とも言います)も広く知られるようになりました。

とてもよくある症状や病気ですし、つい最近もクリニックちえのわに来られた患者さんに「◯◯さんはパニック障害です。聞いたことがありますか?」説明すると、「聞いたことがあります。そう言えば芸能人の…。」と言われました。パニック障害をカミングアウトする有名人も今では珍しくありません。

パニック発作とは

パニック発作は「パニック」という言葉のイメージから誤解されていることも多いです。

Wikipediaを見ると

パニック (panic) とは、個人または集団において突発的な不安や恐怖(ストレス)による混乱した心理状態、またそれに伴う錯乱した行動を指す。恐慌とも言う

とあります。「突発的な不安や恐怖」は確かですが、パニック発作は「パニックになること」ではありません。(少なくとも本人にとっては)こころではなくむしろからだに起こることです。

すなわち

急に息苦しくなったりドキドキしたりして「死ぬんじゃないか」など強い不安におそわれる

これがパニック発作です。

パニック発作では次のような症状が起こります。いずれも不安が本体ですが、変装の名手のように色々な姿で現れます。

• 動悸がする
• 汗をかく
• ふるえる
• 息苦しくなる、息が詰まる感じ
• 胸が痛い、苦しい
• むかむかする、吐き気がする
• ふわふわする、気が遠くなる
• 寒気がしたり暑くなったり
• 耳鳴り
• 現実感がなくなる
• 頭が変になりそうな恐怖
• 死ぬんじゃないかという恐怖

パニック発作は3人に1人の人が生涯に一度は経験します。もちろん本当の心臓発作とか窒息ではありません。命に関わらない「良性」の発作です。しかし「死ぬんじゃないか」という恐怖心は心臓発作などより強いと言われています。

パニック発作が起こったとき

パニック発作が起こったらどうするでしょう?
本当はそのままでいると自然に収まります。しかしそんなことは本人は知るよしもありませんし、不安が強ければそもそも冷静ではいられません。

119番して救急車を呼ぶことは珍しくありません。そうでなくとも、発作が繰り返し起これば病院に行くのがふつうでしょう。

パニック発作のある人が最初にかかるのは心療内科・精神科ではなく、救急や内科です。

救急搬送された場合、到着したときにたいてい発作は治まっています。昔は救急車を呼んだことを医者に叱られる、ということもありました。確かに命に関わるものではない訳ですし、叱りたくなる気持ちも分からないではありません。とはいえ、命に関わる恐怖を感じるのは事実であり救急車を呼ぶのは当然の行動です。批判されるいわれはありません。

内科を受診した場合、身体診察や心電図や血液検査が行われ、異常がないことが告げられます()。過呼吸があるときは「過換気症候群」などと説明され(「パニック発作」や「パニック障害」と言われることはいまだに少ないようです)、心療内科・精神科受診を勧められます。

発作が出たときにエチゾラム(デパス)などの抗不安薬が処方されることもあります(実はこれは治療としては不適切です。改めて説明します)。

パニック発作からパニック障害へ

いずれにせよ、救急や内科では十分な対応は期待できません。かと言って、パニック発作が1回または数回あっただけで心療内科・精神科を受診する人はめったにいません。
そうこうするうちに一部の人には次の発作が来ることになります。発作が繰り返すとどうなるでしょうか。

  1. また起こるんじゃないかと不安になる
  2. 発作が起こる状況を避けるようになる

1で発作が起こりやすくなります。2で生活に影響が出始めます。こうなるとパニック障害です。

まとめ

  • パニック発作は不安が本体
  • パニック発作は3人に1人が経験する
  • 命に関わるものではないが「死ぬんじゃないか」という恐怖心は強い
  • パニック発作のある人は内科か救急にかかることが多い
  • 発作を繰り返すとパニック障害になることがある

次回はパニック発作とパニック障害が起こる仕組みについてお話します。


ただし、パニック発作かな?と思っても他の病気のこともあります、パニック発作に他の病気が合併していることもあります。
気管支喘息、不整脈、狭心症は見逃してはなりませんし、その他の病気、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、甲状腺機能低下症、側頭葉てんかん、褐色細胞腫などはよくある病気ではないものの、診察する医師は念頭に置いた方がよいでしょう。特に高齢者は若年者に比べてパニック障害は少なく、逆に狭心症や不整脈、COPDはずっと多いので重要です。また忘れてはならないのは治療の副作用です。糖尿病治療中の方の低血糖発作をパニック発作とまちがうと危険です。
いずれにせよ、内科的診察は一度受けた方がよいでしょう。クリニックちえのわでも他の病気が否定できないときは一通りの内科診察を行い、必要なら専門医を紹介します。