睡眠衛生 ― 不眠症について 3

不眠症に対する薬を使わない対策の基本中の基本、睡眠衛生についてお話します。

睡眠衛生とは

睡眠衛生とは良い睡眠を妨害したり、促進したりするライフスタイル(食事、運動、物質使用)や環境要因(光、騒音、温度)についての情報を提供することを目的としている。また睡眠衛生には、例えば、寝る前に十分にリラックスできる時間を持つなど、睡眠を促進する一般的なアドバイスや、規則正しい睡眠スケジュールを続けることのメリットについての情報も含まれる。

ピーター・ホーリーによる説明(『睡眠障害に対する認知行動療法』)です。ホーリーは、睡眠衛生(sleep hygiene)の規則を初めて体系化した人物とされています。

睡眠衛生のルール

『睡眠障害に対する認知行動療法』に掲載されているルールを紹介します。

  • 午後遅い時間や早朝の運動
  • 昼寝をしない
  • 就寝前に軽食をとる
  • 就床前の水分補給を避ける
  • 就床の6時間前にはカフェイン摂取を避ける
  • 入眠のためにアルコールを用いない
  • ニコチン摂取を避ける
  • 耳栓やホワイトノイズを使う
  • ペットと一緒に眠らない
  • 快適で睡眠を促す睡眠環境を整える
  • 朝はアラームを使って、睡眠スケジュールを規則正しく保つ

ルールはそのまま全員に勧められる訳ではありません。たとえば昼寝については、取る場合は短くする、昼寝した分だけ就寝時間を遅らせる、という条件つきでかまわないとされていますし、カフェインについては寝る何時間前まで大丈夫かは個人差があるとのことです。また、はじめは全部を厳格に守るにしても、眠れるようになったら全部は守らなくてもよい、とも言われています。自分にとって効果のあるルールを見つけて守ればよい訳です。

「睡眠障害対処12の指針」

厚生労働省研究班による「睡眠障害対処12の指針」も参考までにご紹介します。大きな違いはありません。ただし、睡眠衛生とは異なる項目も入っています。9は不眠症とは異なる睡眠障害(「不眠症について 2」の注を参照)についての注意、10、12は受診の勧めです。

特に12「睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全」は、睡眠薬、中でもベンゾジアゼピン系向精神薬が疑問視されている現在、個人的には削除すべきかと思います。「医師の指示」という表現も、医師が指示し患者が従う、という一昔前の医師患者関係に沿っていますし。2001年の発表から時間も経っており、そろそろ改訂が必要でしょう。実際、上述のピーター・ホーリーも「睡眠衛生の役割、そして基準もそうだが、それらは時とともに変化する」「実際の睡眠衛生のルールは、教科書によって異なっている」も述べています。ルールを絶対視せず、常に見直し・更新が必要です。

  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
  2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
  3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
  4. 同じ時刻に毎日起床
  5. 光の利用でよい睡眠
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
  7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
  8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
  9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
  10. 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
  11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

クリニックちえのわでは、これらを参照しながら、睡眠衛生について話し合います。睡眠についての習慣をふりかえり、改善できるところはないか一緒に考えます。そして改善案を実際に試して行きます。1人でできるに越したことはありませんが、治療者との共同作業が効果的な場合もあります。

次回は、刺激制御法をご紹介します。

【参考文献】

睡眠障害に対する認知行動療法』(風間書房)

睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第2版』(じほう)