トラゾドンの説明文書を作りました

説明を文書で

クリニックちえのわではよく行う説明を文書化しています。

文書にするメリットとしては、

  • 重要なことを漏れなく説明できる
  • 耳からだけでなく目からも情報が入るので分かりやすい
  • あとで読み返すことができる

などがあります。

今のところあるのは

  • PTSDの四大症状
  • 睡眠衛生
  • トラゾドン

の3種類です。今後順次作成して行きます。

トラゾドンについて

さて、この機会にトラゾドンについてお話します。クリニックちえのわで薬物療法を行っている方は半数程度ですが、トラゾドンは比較的よく使う薬です。

トラゾドンは抗うつ薬ですが、不眠症に対して使われて来た薬です。睡眠薬、特にベンゾジアゼピンなど他の薬に比べて副作用は少なめですし、特に離脱症状(中断すると起こる不快な症状)が現れにくいのは長所だと思います。

クリニックちえのわでは主に、抑うつをともなう不眠症に対してトラゾドンを処方しています

抗うつ薬として使う場合は75mg〜200mg(添付文書による、海外では150mg〜600mg)ですが、睡眠を改善する目的ではは25mg〜100mgと比較的少量で足ります。

ただし、睡眠薬のように、寝る前に決まった量を飲めばよい、という訳ではありません。使い方について文書を使って説明しているのはそのためです。

 

トラゾドンについてのエビデンス

抗うつ薬を睡眠の改善に使う、ということは以前から行われていますが、最近、コクランライブラリー(信頼性の高い臨床研究のデータベース)に次のような論文が掲載されました。

Antidepressants for insomnia in adults(成人の不眠症に対する抗うつ薬)

とても興味深い内容ですが、とりあえずトラゾドンに関する部分だけご紹介します。

【背景】

  • ベンゾやZドラッグのような睡眠薬は睡眠促進のために認可されていますが、耐性と依存を惹き起こす
  • 睡眠薬に抗うつ薬が広く使われていますが、不眠症には認可されておらず(注)有効性についてのエビデンスも不明

【目的】

成人での不眠症に対する抗うつ薬の有効性、安全性、耐性を評価する

【結果】

  1. 3つの研究で主観的な睡眠アウトカムが改善した
  2. ポリソムノグラフィーやSEで差は出なかった
  3. 有害作用は認めなかった
  4. 少量のドキセピン(日本では未認可)とトラゾドンの短期使用はプラセボより睡眠の質が少し改善した

以上から、トラゾドンは睡眠障害に対して比較的安全に使用できる薬であると言えるでしょう。

気になるのは高齢者に使用する場合です。

老年医学会の高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(PDF)では他の抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI)、スルピリド、睡眠薬、抗不安薬が「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」に含まれていますが、トラゾドンは含まれていません。高齢者に対しても比較的安全な薬と言ってよさそうです。

ただし

低用量の三環系抗うつ薬を処方された場合に比べて、SSRIやそのほかの抗うつ薬(ミルタザピン、トラゾドンなど)を処方された高齢者の方が死亡、脳卒中、転倒、骨折などのリスクが高かったという報告がある(p49)

とあります。脳卒中や転倒骨折のリスクの高い高齢者にはなるべく処方しない、処方する場合は少量にとどめて副作用に注意することが必要でしょう。

トラゾドンの説明文

参考までに現在クリニックちえのわで使用しているトラゾドンの説明文を転載しておきます。

使い方については日本では一般的なものですが、すべてに十分なエビデンスがあるわけではありません。新たな知見や臨床経験をもとに、改訂して行くつもりです。

【2022年10月2日追記】

2022年3月版に差し替えました。特にこの間、「鼻詰まり」でかえって眠れなくなり中止した方が数人おられたため、副作用に「鼻閉」を追加しました。

【2024年4月29日追記】

その後も鼻詰まりでトラゾドンを中止したケースがありました。鼻詰まりはトラゾドンのアキレス腱なのかもしれません。

トラゾドンは抗うつ薬ですが、少量で睡眠を改善する効果があります。

睡眠薬との違いは

【長所】

  • 深い眠りを増やすことで睡眠の質を改善することが期待できる
  • 依存性が小さいので、必要がなくなれば減薬・断薬しやすい。

【短所】

  • 効果に個人差があり、その人に合った服用のタイミング・服用量(25mg〜200mg)がある。

使い方

飲むタイミング

寝る前に飲むのが原則ですが、効果はゆっくり(2時間ぐらいで眠気)なので、1〜2時間早めに飲む方法もあります。

調整の仕方

開始する

今回は【 】錠から開始します。
追加する
眠れないときは2時間以上あけて1錠追加(2回まで)

適量を見つける
もし合計【 】錠でちょうどよいときは翌日から寝る前にまとめて【 】錠飲む
翌日の眠気が強いときは0.5錠(カッターで切る)か1錠減量

 

よくある副作用

2人〜4人に1人
眠気(数日で慣れることもある)
5人〜10人に1人
頭痛、めまい、だるさ、むかつき、目のかすみ、口渇、鼻閉


薬についてのお問い合わせ

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