呼吸再調整法とともにリラクゼーションとしてよく行われる漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation 以下PMRと略します)をご紹介します。
漸進的筋弛緩法とは
不安が高まったときの反応にを表す”fight, flight, or freeze“という言葉があります。日本語では「闘争逃走反応」と言います。つまり、戦うか逃げるか、固まるか、です。どの状態であっても、筋緊張が高まっている、つまりからだに力が入っている状態です。
PMRが目指すのはからだの力を抜くことです。でも、単に「力を抜け」と言われても難しいものです。なので一度力を入れてから抜く、というのがPMRの工夫です。ストレッチとは別物です。筋肉をのばすのではなく縮めて(力を入れて)戻す(抜く)のです。
筋緊張を解いてリラックスすることが直接の目的ですが、練習して上達すると、緊張を感じ取れるようになります。そして緊張を早めに感じてPMRで対応できるようになればマスターレベルです。
漸進的筋弛緩法の手順
具体的に見て行きましょう。
力を入れて抜く、という動作を手からはじめて全身の筋肉で行います。
- 力を入れて(力を入れ過ぎない、緊張を感じる程度)10秒間その感じを味わう
- すっと力を抜く 30秒間その感じを味わう
- 次に進む
- 一区切りごとに1分間呼吸再調整法
それぞれ1回ずつ行いますが、特に緊張しているところは2回、3回と繰り返してもかまいません。ありがちなのは肩(肩をすくめる動作)です。逆に、ケガしているところやつりやすいところは飛ばしましょう。
メニューを紹介します。
A.手 → B.首と肩 →(呼吸) → C.顔 → D.胸と腹 → (呼吸)→ E.背中→F.脚
という順です。1分間の呼吸再調整法はもう少し増やしてもよいです。
A. 手からスタートです。
- 両手を握る
- 両手を伸ばしてそらせる
- 両腕で力こぶを作る
B. 次に首と肩
- 両肩を後ろにそらせる
- 肩をすくめる
- 首を左側にかしげる
- 首を右側にかしげる
- 深くうなずいて首を胸につける
- 首を後ろにそらせる
C. 次は顔、コンタクトをしている人ははずしましょう。
- 眉を上げて額にしわを寄せる
- 目をぎゅっと閉じる
- 口を大きく開ける
- 口を結ぶ
- 口角を引く
- 頬をふくらませる
変な顔をするので人前ではやらない方がいいかもしれません。壁に向かってとか電車の車窓に向かってなら大丈夫でしょうか。
D. 胸と腹
- 胸に息を吸い込みそのままふくらませ続ける
- 息を吸っておなかをふくらませる
E. 背中
- 背中を後ろに反らせる
F. 最後に脚
- 右脚をつまさきまでピンと伸ばす
- 左脚をつまさきまでピンと伸ばす
- 右脚を伸ばしてかかとをそらせる
- 左脚を伸ばしてかかとをそらせる
- 足指をまるめる
注意点があります。
リラクゼーションの間にこころやからだにいつもと違う変化が起きるのはふつうのことです。
人によっては、リラクゼーションの間につらい記憶や考えが侵入してくることがあるかもしれません。
そのときは考えをそのまま浮かべておき、改めて筋肉に注意を向け直しましょう(マインドフルネス)。
心地よいイメージを浮かべたり、を一緒にするのもよいです。
漸進的筋弛緩法の練習
呼吸再調整法と同じように練習が必要です。
1日2回から3回練習しましょう。
- 朝、布団から出る前
- 午後または仕事から帰ったとき
- 夕食後にくつろいでいるときまたは寝る前
1回30分ぐらいかかります。長いようですが、リラクゼーションにこのくらいの時間を当ててもいいのではないでしょうか。マッサージに行くことを思えば安上がりでしかも医学的にはより確かな効果があるのですから。
まず準備をします。
- 部屋は明るすぎず暗すぎず
- 静かな場所
- すわり心地のいい椅子を用意
- 目は閉じた方がよいが、閉じるのが怖い人は開けたままでよい
- コンタクトレンズをしていれば外す
準備OKなら始めましょう。参考までに動画を。英語のアナウンスですが雰囲気は分かっていただけると思います。
練習して漸進的筋弛緩法(PMR)が身につくと(繰り返しになりますが)
からだの緊張への感度が上がります。どの筋肉が緊張しやすいのかも分かります。
このことで
緊張した部分に筋弛緩法を使うことでリラックスすることができます。また、心身のストレスや疲れをモニターすることができ、心身のバランスを保った生活を送ることができます。
クリニックちえのわでは不安緊張の強い方に呼吸再調整法とセットでPMRをお勧めしていますし。ただし、受診するほどではない方にとっても、日常的なストレスへの対処法、健康法の1つとして身につけて損のない方法だと思います。
是非お試しください。