あたし研究 ー ちえのわライブラリー 3

発達障害()に関連した問題で受診される方が心療内科・精神科で増えています。
クリニックちえのわでも同じです。

発達障害かどうか知りたい、という方、発達障害で年金を受給したい、という方はもちろん、職場や学校のストレスの背後に(ご本人または周囲の人の)発達の問題が隠れている 、ということもよくあります。

発達障害についての私たちの考え方、クリニックちえのわでできることについては改めてお話したいと思いますが、今回はちえのわの待合室にある、発達障害がテーマの一冊をご紹介します。

『あたし研究 自閉症スペクトラムー小道モコの場合』(かもがわ出版)

発達障害(自閉症スペクトラム障害、略してASD)当事者である小道モコさんがご自身の体験を文章とイラストで紹介した本です。

 

 

 

 

実はこの本は数年前にASD当事者の患者さん(今も通院中です)から教えていただきました。この方は小道さんと同じ女性なので、体験がオーバーラップするところも多かったようです。「以前は自分を否定していたけど、今は受け入れている。」最近の彼女の言葉です。彼女の変化にはこの本も大いに役立ったのではないでしょうか。同じような特性、共通の体験を持ち、悩んで生きている人(仲間、ピア)のメッセージに私たちは力づけられるものです。

小道さんの読者へのメッセージです。少し長くなりますが、とても素晴らしい文章なので引用させていただきます。

私の願いは、一人でも多くの方々にASDについて理解していただき、これから将来を歩む子どもたちが、のびのびと自分の翼を広げて、成長していってほしいということです。私は、自分がASDと知るまで、ずっと自分の翼を隠して生きてきました。隠さないと生きてこれなかったからです。でも、翼を折って、隠して、生きていくのは、とてもシンドイことです。

隠し続けた年数分だけ、ツライ思いをしました。

でも、30歳を過ぎた時に診断を受け、隠していたことも忘れていた自分の翼に気づき、怖々、少しずつ広げてみたら…「アレ?あたし、空を飛べるかも!」と思えてしまうほどの自由を感じました。

オトナの私がこのような経験をできるのだから、理解ある人々の中で、子どもたちが成長する(翼をのびのびと広げて生活する)ことができるなら、どんなにスゴイことになるだろう…と私は想像します。スゴイというのは、別に偉くなるとか、有名になるという意味ではなく、その子らしく生きられる、ステキな世界が待っている、ということです。幸せって、「ありのままにその人らしく生きられる」ことだと私は思っているんです。

子どもたちの翼が、折れないことを。 翼を隠す必要などない、と自分で自分を肯定できることを。 私は願っています。

 

たとえばこんなページがあります

ASD/ADHDの特性を持つ人は10人に1人以上ではないでしょうか。家族や友人、学校や会社に広い意味での発達障害当事者は必ずいます。いや、これを読んでいるあなた自身がそうかもしれません。『あたし研究』は彼女・彼らを知る助けになります。是非一度手にとってみて下さい。

 

注:

「発達障害」は、発達障害者支援法、発達障害者支援センターなど、公的に使われる用語として使っています。しかしこの言葉が広まるにつれ、不適切に(ときに差別的に)使われることも見られるようになりました。この言葉の長所短所については改めてお話したいと思います。