MRとの面会、いたしません

「いたしません!」

私(山田)も見ている『ドクターX』の決めぜりふの1つです。

医師免許がなくてもできる仕事はいたしません…ということはもちろんありません。心療内科・精神科の診療の主な部分はむしろ医師免許がなくてもできることです。外科の手術に当たるものは心療内科・精神科では複雑な心理療法でしょうが、それにすら資格は必要ありません。

医師免許がないとできないことは、処方箋と診断書の発行ですが、それは必要ではあるものの、診療の中心という訳ではありません。

やはり大事なのは「叩き上げのスキル」です。

『ドクターX』を離れましょう。

私が個人的に「いたしません」と決めているのはMR(製薬会社の医療情報担当者)との接触です。

MRは本来は営業職ではなく、医師や薬剤師に薬の情報提供をする仕事です。ただし、製薬会社から派遣されている以上、ほぼ自社製品の情報提供ですし、営業職との境目は曖昧になっています。実際たいていのMRは、情報提供以外の「接待」的なこともしています。

私はMRと懇意にすることはありませんでしたが、最初の頃は会話ぐらいはしていたし、MRの置いていくボールペンのようなノベルティグッズは使っていました。しかし十数年前からMRとまったく接触しないようになり、グッズも受け取らない(置いて行った場合は捨てる)ようになりました

理由は治療の選択について影響を受けたくないからです。MRの提供する情報には当然ながらバイアスがかかっています。それは私程度のリテラシーでもすぐに見て取れるレベルです。

なので、MR経由の情報はシャットアウトすることにしています。今や薬についての情報は十分過ぎるほどあるのでそれで特に困ることはありません。

ノベルティグッズについても、それを持っているだけで何らかの影響があることが分かっています。たとえば、胃潰瘍などに使われるPPIというタイプの薬はいくつかありますが、もし「ネキシウム」と書かれたボールペンを普段使っていると、「ネキシウム」と処方箋に書いてしまいがちなのではないでしょうか(もちろんネキシウムが悪い薬という意味ではありません)。

製薬会社は膨大な費用を販売促進のために使っており、それは患者さんの負担になり、医療費の引き上げをもたらしています。個々の薬品価格への上乗せだけではありません。販促の影響で適切とは言えない処方が行われることもあるでしょう。医師が自身では気づかず影響されていることは繰り返し指摘されています。

という訳で、

MRとの面会、いたしません!

面会をお断りしたMRさんたち、ごめんなさい。

医師とMRとの関係については、『週間医学界新聞』に連載されたともに考える医師と製薬会社の適切な関係が参考になります。私もこの記事で、自分が単なる頑固者ではないことを知って安心した記憶があります(笑)。