ちえのわ中間報告 1 ― 薬に頼らない診療

9月にオープンして半年が経とうとしています。

そろそろ一度立ち止まって振り返ってみてよい時期です。

そこで今回「中間報告」として、いくつかのテーマに即して、クリニックちえのわのこれまでをまとめてみました。

まず今回は薬に頼らない診療についてです。

「薬に頼らない診療」の実際

クリニックちえのわでは薬に頼らない診療を心がけていることはすでにお話しました。

実際はどうでしょうか。


2018年1月と2月に1回でも受診した方で調べてみました。

 

 

 

薬なしが60%薬ありが40%

薬あり40%のうち、他院からの薬を継続処方している方が26%ちえのわで新たに処方した方が14%です。

新たに処方の方

新たに処方した方の半分は重症うつ病で眠れない人でした。

これに対して、トラゾドンまたはミルタザピンを処方しました。

重症うつ病には抗うつ薬の効果が期待できる(うつ病と薬)、ということもありますが、まず何より睡眠障害の改善を目指しました。睡眠衛生刺激制御法のような薬以外の方法を重症の人が徹底して行うことは難しい、という理由もあります。

薬の効果はおおむね良好で副作用(主にミルタザピンによる日中の眠気)も許容範囲でした。ただ、全員に薬が必要だったのか、もっとよい方法はなかったか、という思いもあります。これについては別のエントリーで検討します。

継続処方の方

一方、他の病院やクリニックから移って来られて、直近まで服薬している方には、まず同じ内容の処方をします。そしてご本人と相談しながら調整して行きます。

「薬をやめたい」「減薬したい」という理由でクリニックちえのわを受診する方も多く、その中には向精神薬の副作用で苦しんでおられる方もいます。その場合もすぐに薬を切ると離脱症状が起きるので、「急がばまわれ」、ご本人と相談しながら少しずつ減量して行きます。

ご本人が薬が効いていると感じている場合もあります。医学的には疑わしいこともあるのですが、まずはご本人の考えを尊重した上で話し合って行きます。薬以外の方法を伝えて試していただくこともします。薬だけで問題が解決していることはまずないので、薬以外の方法はいずれにせよ必要だからです。

薬なしの方

そして「薬なし」の方。

ちえのわを訪れた患者さんの中に、薬を飲みたくないと言ったら「だったら診察に来る意味がない」と医者に言われた、という方がおられます。「年金診断書を書いてもらうためには薬を飲んでいないといけない」と信じている人もいます(もちろん根拠はありません)。精神疾患になると必ず薬を飲まなければならないかのようです。

しかし、実際にはそうではありません。心療内科・精神科の問題にはたいてい、薬よりも効果的な方法があります。これまで紹介して来たUpToDateやNICEのガイドラインのような国際標準も向精神薬だけの治療は勧めていません。

薬を飲む以外に回復のためにできることはたくさんあります。それを提供して行けたら、とクリニックちえのわでは考えています。

薬なしの人たちの診療については改めてお話する予定です。