古い友人の谷山牧さん(国際医療福祉大学)からお声掛けいただき、『精神看護』という医学書院の発行する雑誌に文章を書かせていただきました。
それがきっかけとなり、2021年3月号から連載を持つことになりました。
「トラウマインフォームドアプローチが必要なケースの現実を書く」という連載タイトルは編集者によるものですが、要は山田がクリニックちえのわで出会う「現実」についてトラウマインフォームドな視点を踏まえて書く、ということです。
近年、トラウマインフォームドケアまたはトラウマインフォームドアプローチ、という言葉もよく見かけるようになりました。ちえのわがスタートした頃は、「トラウマインフォームド」で検索すると私の書いた文章が上位にヒットするぐらいマイナーな言葉でしたが、今ではかなりメジャーです。
現に同じ雑誌にもトラウマインフォームドを冠した連載があったりしますし、亀岡智美さんや野坂祐子さんの著書のタイトルにもなっています。
これらの人々の語るトラウマインフォームドに批判がない訳ではありません。和魂洋才という言葉にあるようにこの国の身の丈に合わせた欧米文化の輸入になっているように思うのですが、私のような一臨床医が彼らのようなインフルエンサーに太刀打ちできるものではありません。
それもあって、連載ではトラウマインフォームドという語はなるべく使わないことにしました。そんな(今や)流行り言葉を使っても使わなくても私の考えることや書くことは変わりません。
さて、連載はすでに第2回までが掲載済みです。
第1回は「身体拘束」でしたが、予想通りと言うかまったく反響がありませんでした。
文中の「身体拘束を中心に据えて見えてくる日本の精神科医療の問題」という図はけっこう気に入っています。これをもとに4,5時間、いやもっと話せる自信もあります。一つ一つの項目、たとえば「障害の医学モデル」に対しては「障害の社会モデル」、「生物学的精神医学」に対しては「人権に基づいた精神医学(human rights-based psychiatry)」など、オルターナティブについて語っていくこともできます。供養の意味でここに載せておきます。
第2回「中絶というトラウマ、周産期という危機」については個人的に何人かの方にお見せして肯定的なコメントをいただきました。ただ『精神看護』の読者からの反響はやはり今のところありません。そもそもテーマ自体、彼女/彼らの関心外なのかもしれません。
なので、少し虚しい気持ちになりながらなのですが、あと何回かは書きます。書いておきたいテーマがあるからです。もしお目に触れましたらご感想などいただけたらうれしいです。