刺激制御法 ー 不眠症について 4

刺激制御法はどんな不眠症のタイプにも効果がある方法です。特に寝付けないとき、夜中に目が覚めて眠れないときに試してみましょう。

刺激制御法とは

  1. 眠くなったときだけ、眠るために横になること
  2. 眠ること以外は寝床を使わないこと。つまり、寝床では読書、TV視聴、飲食、心配事はしない。ただし、性行為は例外とする。この場合は、寝ようとした時点からこの教示が適用される。
  3. 寝つけない場合は、寝床から出て別の部屋に行くこと。起きたいだけ起きておき、それから眠るために寝室に戻ること。できれば時計は見ないようにし、すぐに寝つけなければ寝床から出てほしい。目標は、寝床と睡眠を早急に結びつけることである!このことを覚えておいてほしい。おおよそ10分以上経っても寝つけなくて、寝床でゴロゴロしている時は、この教示に従っていないことになる。
  4. それでも寝つけなければ、「3」を繰り返すこと。夜の間は、これを必要なだけ実施すること。
  5. 昨夜どのくらい眠れたかにかかわらず、アラームをセットして毎朝同じ時間に起きること。これは一貫した睡眠リズムを獲得するのに役立つ。
  6. 日中は昼寝をしないこと。

睡眠障害に対する認知行動療法』より引用

厳格にこの通りでなければ効果がないという訳ではありません。昼寝については、睡眠衛生のところで説明したように、短時間なら大丈夫です。

寝床から出るまでの「10分」というのもあくまで目安です。

実際

この治療法のオリジナル版では、15分以上は寝床にいないことを推奨しています。私たちの感覚では、15分というルールよりも、単に、目が覚めていたり、眠れないことにイライラしていることに気づいたら、寝床から出るという方が良いみたいです。

とあります。ちなみにUpToDateでは20分です(笑)。

一方で寝床に戻ることについて、

オリジナル版では、眠くなるまで寝床には戻ってはいけないとなっています。人によっては、眠気をモニタリングすることに強いプレッシャーを感じることがあります。まずは、寝床から出て起きている時間を30分や60分と決めておくと、取り組みやすくなるようです。

とあります。この30分、60分という時間にも医学的な理由はないようです。概して睡眠については何分とか何時間という時間は重要ではない、ということでしょう。

刺激制御法はよく「ベッドは眠るためとセックスするためにだけ使え」と要約されますが、もう1つ大事なのが5の「アラームをセットして毎朝同じ時間に起きる」です。眠れないとついそれを取り返そうとしてベッドにいる時間が長くなります。そのことで睡眠リズムが崩れてさらに眠れなくなるという悪循環に陥ります。

いかがでしょうか。刺激制御法はお役に立ちそうでしょうか。

刺激制御法が効果的なわけ

眠れないとついベッドにいる時間が長くなりませんか?横たわって眠ろうと努力し、眠れないことが気になりさらに眠れなくなる、ということになりがちです。そうなるとベッドに横たわると、いやベッドを見ると「眠れない」ということが頭をよぎります。

本来は、暗くしたり静かにしたりベッドに横たわったりすると自然に眠くなります。つまりこれらが睡眠を促す刺激になっている訳です。しかし眠れないことが続くと、ベッドが眠りを促す「刺激」として働かなくなって来るわけです。

刺激制御法とはその「刺激」をコントロールする方法です。コントロールして再びベッドが眠りを促す刺激として力を取り戻すのが目的です。ベルの音を聞いたら唾液が出るパブロフの犬のように、ベッドに横になったらバタンキューが刺激制御法の理想です。


睡眠についてのお話、次回は少し間を置いて、薬についてお話します。

クリニックちえのわでは薬を使わない方法を優先していますが、それだけではうまく行かないことがあります。そのときはそれと併用して短期間の服薬を提案することがあります。

薬については期待される効果とあり得る副作用を知っていることが重要です。それについて基本的なことをお話する予定です。