家庭や職場でのトラウマ・ストレスが原因でこころの不調が続く
メンタルの不調がストレスやトラウマによって起こる、という考えはとても馴染みやすいと思います。何をいまさら、と思う方もおられるのではないでしょうか。
しかし意外なことに、メンタルヘルスの世界では、ストレスやトラウマは軽視されて来ました。出来事は原因ではなくあくまできっかけ、引き金に過ぎない、という考え方が主流なのです。メンタルの不調の原因は、出来事という「外部」ではなくその人の「内部」にある、と考える訳です。薬物療法に偏っている理由の1つもそこにあります。
私(クリニックちえのわの医師)自身もそのように考えていました。ですので、2003年来日したニュージーランドのメアリー・オーヘイガンさんが、精神疾患の大半は虐待などのトラウマが関係している、という趣旨の話をされたときは戸惑いました。当時の私の(そして今でも多くの精神科医の)「常識」に反していたからです。
その後、医師として様々な患者さんと出会いながら、私は考えを変えていきました。直接のきっかけが対人暴力(ハラスメントやDV、性被害…)の方は言うまでもありません。そうでない方でも、過去・現在の対人暴力体験が影響していることが多いことが分かりました。なかなかよくならない、通常の治療ではうまく行かない、という方の多くがそうでした。
現在私は、次のように考えています。
- 精神科を受診する人の多くは、過去現在の有害な体験(特に対人暴力)の影響を受けている。
- すなわち、メンタルヘルスの問題の原因は基本的にその人の「内」ではなく「外」にある。
- 受診する人だけではない。医療スタッフ、支援関係者にもそのような人はいる。それほど対人暴力は日常的な現象である。
- 従って、すべての人がトラウマを抱えている可能性があると考えた方がよい。
- 以上から、私たちの活動は、トラウマ理解に基づかなければならない。
クリニックちえのわは、トラウマ理解に基づいたアプローチ(trauma-informed approach)を行っていきます。
トラウマ・インフォームドという言葉を聞くことが最近増えてきました。私たちのアプローチはそれと同じところもありますが、違うところもあります。詳しくは改めてご紹介いたします。