クリニックちえのわでは初めて受診された方に受付票と問診票の記入をお願いしています。
ごくふつうですが、それでもいくつかの工夫はあります。
その1つが性別欄です。
「男女という選択肢を入れた方がいいのでは?」と聞かれますが、空欄になっているのは理由があります。
最近、性別欄が「男・女・その他」となっている書式を見かけます。性別が男と女だけではない、ということを踏まえているのだと思います。クリニックちえのわの受付票もそれにならっています。意図したところが通じているか自信はないのですが…。
性別とは何でしょう?
あなたは女? 男? それとも、どちらでもない?
性別と性的多様性
自分がどの性別かというのは
- どの性別の身体に生まれたか
- 自身をどの性別に感じるか
- どの性に性的魅力を覚えるか
という3つの要素によって決まるとされています。
私(山田)自身は男性として生まれ(生物学的性が男)、ほぼ男性と感じ(性自認が男)、ほぼ女性に性的魅力を覚えます(性指向が異性愛)。「ほぼ」というのは、女性っぽいところもあるし、ある種の男性の性的魅力を少なくとも理解できるからです。ただ、このくらいのぶれやゆらぎは誰にでもあるでしょう。それも含めて私はヘテロ男性なのだと思います。
この社会の多数派はヘテロ男性またはヘテロ女性です。しかし圧倒的多数ではありません。それ以外の人たちも実はたくさんいます。
たとえば女性の身体に生まれ自分は男性と感じる人(トランス男性)、自分を女性と感じ女性に性的魅力を覚える人(レズビアン)など、あらゆる組み合わせ、あらゆる可能性がありますし、ずれやゆらぎは様々です。これを性的多様性と言ったりします。そのシンボルは虹(レインボウ、アルカンシェル)です。
ヘテロ男性、ヘテロ女性以外の人たちをセクシュアルマイノリティと言ったりLGBT(注1)と言ったりします。本当はひとまとめにするのは乱暴です。虹の色を赤とそれ以外に分類するようなものです。とはいえ、意味がない訳ではありません。たとえば外国人や障害者のように、この社会で少数派であることによって共通の不利益を受けている、というグループがあります。その不利益が解消されれば、ひとくくりにした呼称は消えていくのかもしれません。しかし不利益や差別がなくなるまでは必要なのだと思います。
『LGBTと医療福祉<改訂版>』の紹介
前置きが長くなりました。
今回は『LGBTと医療福祉<改訂版>』をご紹介します。
QWRCさん編集のこの本は24ページの小冊子ですが、知る人ぞ知る強力な執筆陣で充実した内容です。
国内のLGBTの割合は、全人口の3〜5%であると言われています。『LGBTと医療福祉』 p3
LGBTの当事者は特別な存在ではなく、毎日学校や職場に行き、スーパー で買い物をし、医療機関も使う「ごくありふれた人々」です。確実にあなたの近くにいます。『LGBTと医療福祉 』p2
いないことにされ、 無視されつづけ、時には笑われる体験をしてきた当事者が少なくありませ ん。遠慮して生きるようになってしまっているために、カミングアウトが難しいのはもちろん、こうしたい、こうしてほしいと訴えるのには、さらに 壁があります。『LGBTと医療福祉 』p2
ある人は、いつも困っているから、自分が困っているとい うことさえ気づかずに、あなたには何も求めないかもしれません。このよう な背景から、医療や福祉の現場でLGBTに出会うことは「少ない」のです。『LGBTと医療福祉 』p2