強迫症について

  • 戸締まりが気になって何度も鍵を確認してしまう
  • 汚れが気になって手を洗うのをやめられない
  • 重要なことではないのに、決められない
  • 知らないうちに誰かを傷つけたのではないかとくどくど考える

不快な考え(強迫観念)が執拗に頭に浮かぶ、それを振り払おうとする行為(強迫行為)を繰り返し行う、このような強迫症状で生活に支障が出る、それを強迫症または強迫性障害(obsessional compulsive disorder 略してOCD)と言います。

強迫症はパニック症、社交不安症、全般性不安症と並ぶ不安症で、100人に2〜3人に起こります。珍しくない精神疾患です。

強迫症を診る医療機関は少ない

最近クリニックちえのわを受診する方の中で強迫症状で悩む方が目立っています。ただし、強迫症状を治したい、病気かどうか知りたい、という理由で受診する方は多くありません。別の理由で受診した方の診察を進めて行くと、実は一番の困りごと、問題が強迫観念や強迫行為である、ということによく出会うのです。

強迫症状を自ら訴える人、その治療を求めて心療内科・精神科を受診する人は実はごく一部であることが知られています。

そのせいか、強迫症の治療経験が豊富な医師も(少なくとも日本では)多くありません。

実際、強迫症の治療で有名な原井宏明さんの著書には

自分や家族のOCDについて精神科医を頼りたいと思ったとき、大半の人は『精神科』をうたっている医療機関ならどこでも大丈夫だろう」と考えるでしょう。しかし、なんのリサーチもせずにいきなり受診したら、大半の精神科病院やメンタルクリニックに「OCDは診ていない」「薬物療法ならできる」と言われるかもしれません。薬物療法でもある程度症状はよくなりますが、OCDの治療には、行動療法(ERP)が最も有効で、これを実践できる精神科医やカウンセラーは少ないのです。

『やさしくわかる強迫性障害』

とあります。

受診する方が少ないから少ない治療者で足りる、ということであればよいのです。しかし、受診しようとして断られて行き場をなくすとしたら…。受診しても見逃されて方向違いの治療が行われてしまうとしたら…。そして強迫症の患者さんが医療難民になってしまうとしたら…。

やはりここにも精神医療の需要と供給のギャップがあるようです。

医療機関の探し方について、同じ本にはこうあります。

精神科医を探すときは、いきなり受診するのではなくて、まず電話でOCDの治療を行っているかどうかを確認してください。その際に、どんな治療方法で、年間どのくらいの数の患者さんの治療をしているか聞いてみるとよいでしょう。「OCDの患者数は年間10人以下」と言われたら、そこの医療機関ではほとんど治療実績がないに等しく、選択肢から外したほうがよいでしょう。

『やさしくわかる強迫性障害』

この方法で適切な医療機関にたどり着けるかどうか、私には分かりません。少なくとも近隣で探すのは大変そうです。

クリニックちえのわでの強迫症の診療

クリニックちえのわは強迫症の患者さんを受け入れています。ERP(暴露反応妨害法という認知行動療法の一種)の経験は豊富とは言えないもののあり、有効性を感じています。

とはいえ、私たちのマンパワーでは対応できる患者数に限りがあります。やはり、強迫症の診断と治療ができる治療者、医療機関が増えることが必要ではないかと思います。

次回は、クリニックちえのわでの強迫症の診療をご紹介します。