多職種連携学習会に行って来ました

8月1日木曜日、明石市民病院で開かれた多職種連携学習会に参加してきました。
ちえのわから明石市民病院までは明石公園を通って歩いて行けます。夕方、思ったほど暑くなく、ちょうどよい散歩になりました。

18時30分開始、テーマが「認知症ケア」なので、前半は認知症全般についての講義でした。後半がグループでのディスカッションでした。

ディスカッションは、特定の話題を設けずに行われました。ケアマネ、看護師、薬剤師、など多職種、しかも病院、診療所、調剤薬局、など多領域の人たちがそれぞれの現場で経験したこと、考えたことを話す、といういわば異種格闘技戦、楽しかったです。

それぞれが自由に5分ずつ語り、それについての感想を出し合う、と方式。
私は認知症のケアラー支援の話をしました。

これまで精神科で在宅医療で、たくさんの認知症の患者さんに出会いました。

ちえのわでは認知症ご本人の受診はまだまだ少ないのですが、むしろ多いのは認知症のご家族を介護している患者さんです。それが患者さんのメンタル障害の直接の原因である場合もそうでない場合もありますが、介護が生活に色濃く影響していることはみなさん共通です。中にはヤングケアラー()もおられます。それらの方を思い描きながらお話していると5分を超えてしまいました。

私の話にも少し(笑)感想が出ましたが、盛り上がったのはグループに二人おられた薬剤師のお話でした。
このような場に薬剤師が参加するようになったのは最近の傾向でとてもよいことです。
在宅での服薬の難しさ、特に認知症の患者さんが服薬を忘れてしまう、ということが薬剤師の方の悩みの種のようでした。

服薬を確実にするための工夫として、

  1. 服薬回数を減らす
  2. サービスを利用した服薬確認

という意見が出ました。
以下は当日出た意見に私の見解を加えています。

1は医師の役割です。
高齢者は多くの健康問題を抱えているため、しばしば多剤になりがちです。
初回往診にうかがったとき、その薬の多さに驚く、という経験を在宅医としてして来ました。直近に処方された薬だけでなく、以前に処方された薬袋があったりして、ご本人もどれを飲めばよいか分からなくなっていたりします。
その中で必要なもの、なくてもいいもの、かえって有害なものを腑分けして必要最小量にすることが在宅医の最初の仕事になることがあります。1日3回の薬を1回の薬に変更するなどして服薬回数を減らすことも重要です(服薬回数が少ないほど服薬しやすい=アドヒアランスがよい、という研究があります)

その結果、1日1回にできたとしましょう。
すると、認知症の人が一人では飲み忘れがちであっても、周囲がお手伝いすれば飲めるようになります。

そこで2、サービスを利用した服薬確認です。

実際に、ヘルパーが服薬確認するということがよく行われています。
そこでケアマネの出番です。サービスを組み合わせて1日1回は誰かが入る、というサービス計画を作ればよいのです。
(ちなみに夏場では室温の確認も大事です。患者さんがエアコンの操作を上手にできないことがあり、熱中症の危険すらあります。)

一方、医師の私も含めて、在宅スタッフにとって薬剤師はまだまだ馴染みが薄い存在です。処方箋のやりとりや電話での疑義照会だけではなく、より深い連携、「顔の見える連携」のためには直接会う機会を持ちたいものです。
これにはサービス担当者会議がよいのではないか、という話になりました。
現状、サービス担当者会議に調剤薬局の薬剤師が参加していることは稀です。
しかし実は、訪問服薬を行っている薬剤師が入れば、チームにとって大きな力になると思います。実際、別の領域ですが、薬剤師は病院の緩和ケアチームの中心メンバーの一人です。私もチームでとてもお世話になりました。

「多職種」をさらに超えた多様な立場、多様な視点が入ることでサービス担当者会議は実り多いものになることでしょう。

なお、当日話せなかったことですが、付け加えておきます。

サービス担当者会議の中心はあくまでサービス利用者ご本人です。そのためには利用者(患者)の自宅で、本人、家族を交えて開かれるべきと私は考えていますが、認知症の人の場合は、形だけの参加にならないようにしなければなりません。すなわち、その人の意向をどう尊重するか、そこに工夫が必要です。認知症が進行した人ではアドボケート(後見人という意味ではなく、代弁の意味でもなく、ご本人の意思表示をサポートする、というより広い意味です)が不可欠になるでしょう。それをどう保証するかを私たちは考えていかなければなりません。

澁谷智子さんによれば、ヤングケアラーとは

家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども

です。詳しくは以下をご覧下さい。

子どもが家族をケアする時代(NHKハートネット)