発達障害についての認知度が上がっています。発達障害者支援法が制定されて15年、むしろようやくと言えるのかもしれません。発達障害がメディアで取り上げられることも飛躍的に増えています。
このような社会状況で、自分や家族が発達障害ではないか、と気づく方も多くなっています。一方、私たち医療者の側も、メンタルヘルスの問題と発達障害の関係に気づくようになって来ました。
すなわち
- 発達障害の診断や治療支援を求めて受診する人
- 診断や治療の過程で発達障害が明らかになる人
が増えています。
しかし医療はこの現状に追いついていません。そもそも発達障害について相談を受ける病院やクリニックは限られています。
クリニックちえのわに相談が多く寄せられる背景には、この需要と供給のギャップがあります。
これまでの取り組み
ちえのわでは、新しい知見を取り入れ、エビデンスに基づく診療を心がけています。その一環として、発達障害については、下図のような標準的な手順で診断を行っています(ちえのわで行っているのは青字の検査です。赤字は行っていません)。
診断後のフォローについても、日常生活や仕事への助言(本人、家族、学校・職場関係者に対して)を行ったり、療育手帳、精神保健福祉手帳の診断書を作成したり、障害年金の取得をお手伝いしたり、できることは行ってきました。
2020年の2つの取り組み
2020年クリニックちえのわでは発達障害の診療をバージョンアップします。
具体的には
- 発達障害についてさらに詳しい評価を行い、支援や治療の質を上げる
- 地域や関係機関に対して発達障害について発信していく
という2つの取り組みを行います。
まず、現在行っている診断に必要な検査に加えて
- 認知特性 ー WAIS、WISCなど
- 適応行動ー Vineland-II適応行動尺度など
などを順次導入して行きます。
これらに基づいて方針を立てることで
- 長所を知り、活かす
- 苦手を改善する
- 環境を改善する
という支援・治療がさらに充実します。
その際に私たちは、トラウマインフォームドアプローチを重視します。
発達障害とトラウマというテーマについては機会を改めますが、さしあたり、発達障害者のメンタルヘルスの問題にもトラウマ、特に対人暴力(虐待、いじめ)によるトラウマが関わっていることが多い、と言っておきましょう。
また、発達障害者本人や家族から、学校や職場、作業所、支援機関などの関係者に発達障害をもっと理解してほしい、という声を聞きます。
これまで個別に、教員や職場関係者とお話しする機会を持って来ました。しかしそれに加えて、発達障害についてのベーシックな知識を関係者に持って頂くことが必要ではないか、と思うことがよくあります。
クリニックちえのわとして、そのような場を持てないか、と考えています。
一般向けの講演よりむしろ、ちえのわの役割を考えて、連携する関係者を対象にお話しする場を設けたいと思います。2020年の課題として検討して行きます。