発達障害への取り組み 4 ー スクリーニングを書いてから1年以上経ちました。
この間に、発達障害について調べてほしい、というご相談が、ご本人やご家族から寄せられることが増えています。
一つの理由は、発達障害の相談を受け付ける医療機関が近隣に少ないことでしょう。そのせいか、地域の子育て相談窓口などからもちえのわをご紹介いただくことがあります。
ニーズに応える、というのがちえのわの基本方針です。ちえのわの発達障害診療はまだまだ発展途上ですが、ご相談を受けてご本人やご家族と一緒に考え、取り組みながら、レベルアップして行きたいと思います。
さて、ブランクをはさんでですが、前回の記事の続きで、発達障害の診断についてお話します。
今回はADHDの診断についてです。
ADHDかも?
細かなミスが多い/ ものをよくなくす/ 先送り癖/ 整理整頓が苦手
ついしゃべり過ぎてしまう/ じっとしているのが苦手
などで子どもの頃から苦労している、という人は少なくありません。
そうした人たちが「自分は発達障害ではないか?」「ADHDではないか?」と考えて相談に見えることが増えています。
背景にはADHDがメディアで取り上げられることが増えたことがあるでしょう。
有名人でADHDをカミングアウトする方も増えてきました。勝間和代さん、小島慶子さんは記憶に新しいところです。
勝間和代、あさイチで自身の発達障害「ADHD」を語る 「さらっと言っていてすごい」と称賛の声
カミングアウトしてはいなくとも、たとえばお笑い芸人の方がADHDエピソードで笑いを取っていることを見ることがあります。
過剰診断と過小診断
このような状況にあって、相談を受ける私たち医療者の側には注意が必要です。医学用語で言う、過剰診断(overdiagnosis)、過小診断(underdiagnosis)の問題です。
ADHDについては、現在3種類の薬ーコンサータ、ストラテラ、インチュニブーが使えるようになっています。
認知症について、アリセプト(ドネペジル)が認可されて以来、アルツハイマー型認知症の診断が増えたのは有名なエピソードです。
これと似たことが起こっているのかもしれません。
残念ながら、ADHDっぽい(?)症状があればすぐにストラテラを処方する、という医師も存在します。過剰診断です。
一方で、「ADHDではないか?」と受診しても「流行ってるだけ。あなたのような人はADHDではない。」と門前払いされた、という話も聞きます。
精神科医師の間でも、ADHDと言えば極端に落ち着きがなくじっとしていられない子ども、という古いイメージが残っているのかもしれません。今でも、「多動の子ども」は目立ちますが、「不注意な大人」は目立ちません。こうしてADHDが医師によって見落とされてしまいます。過小診断です。
そこで、過剰診断を避け、しかし過小診断に陥らないように、できるだけ正確な診断が私たち医師に求められている、と言えるでしょう。
CAADID
クリニックちえのわでは患者さんの困りごとなどを具体的に聞いていく通常の面接に加えて、診断ツールを使っています。
大人の場合(注)まず、CAARSをスクリーニング(発達障害への取り組み 4 ー スクリーニングを参照)として用います。
CAARSでADHDの可能性が高いと見なされる場合にはCAADIDを用います。
CAADIDを用いることで、発達についての情報収集に加えて、診断基準に沿った半構造化面接(あらかじめ定められた質問をしていく面接)を行い、検査者の主観に左右されない診断を得ることができます。
CAADIDの意義は正確な診断だけではありません。漏れなく、ご本人があまり意識していないことも含めて、ADHDに関連した問題を拾い出すことができます。これにより、包括的、網羅的な対策を考えて行くことができます。
ちえのわでのADHD診断
CAADIDは通常は1時間以上かかる検査です。ちえのわの診察枠は1回30分までですので、2、3回に分けて行っています。
ADHDの診断を求めて来られる方の場合、CAADIDを行うのは2回目の診察以降になるので、結果が出るまでに3〜4回の診察が必要になります。期間としては1ヶ月以上かかることもありますが、ご了承いただければ助かります。
子ども(18歳まで)の場合は、スクリーニングとしてADHD-RS、診断のためには「子どもの ADHD 臨床面接フォーム」(『注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版 』収録)を使っています。